あまてらす 2.未来探査船

 

未来探査船

 

探査船あまてらすは無人宇宙船である。もちろん日本の優れた宇宙船技術によって有人でも打ち上げることは可能であったが、任務の特殊性とブラックホール通過による帰還の困難性、及び光速での飛行により、もし帰還できたとしても地球に降り立った時に浦島太郎状態を避けるため無人とされた。

今回の宇宙探査計画は、宇宙天文物理学で有名な早瀬隆博士が提唱したものであり、英語名、Future 100 Search  Team 略称F1STで、「100年未来探査チーム」というのが正式な名称であるが、頭文字をとってフィストと呼ばれている(ただし、発射時にいた若手研究員は「竜宮プロジェクト」略称して「竜プロ」と言っている。そのときの若手もいまや中堅研究員となっている)。

人類の住む地球が属する銀河系内には、恒星(太陽)は1000億個以上あるが、宇宙内にそういった銀河系は100億個以上ある。そして銀河系内でもアンドロメダ銀河までの距離は230万光年、M83までは1600万光年、NGC2997に至っては4500万光年という途方もない距離にある。そして一つの銀河系の直径は10万光年という膨大なものであり、その距離がいかに遠いかは地球から月へ光速で1秒、太陽へは8分ということで類推してみると如何に宇宙が広大かがわかる。

宇宙についての研究は、宇宙の起源探索、暗黒物質・暗黒エネルギーの調査、そして地球外生命の探索が3大テーマとされている。

25年前の2021年にハワイ島マウナケア山頂に建設された光学赤外線望遠鏡「TMT」の反射鏡の直径は30メートルもあり、当時、世界最大のアメリカ、ケック望遠鏡の3倍に相当した。集光能力や解像度においても格段に優れており、地球と太陽の距離の約200億倍離れた宇宙にある惑星を判別できる性能を持っており、建設以来輝かしい成果を上げてきている。

宇宙の観測においては、光が地球へ届くまでに長大な時間がかかるため、遠いものほど古い姿を映し出している。TMTは宇宙の成り立ちを最初から解明し、太陽系外の地球に似た惑星や、宇宙を満たす正体不明の物質「暗黒物質」「暗黒エネルギー」なども調べている。137億年前に誕生した宇宙のうち、129億年前の銀河までが日本のすばる望遠鏡で観察できていたが、TMTは137億年前までの観察を行った結果、実は宇宙の誕生はもっと古いのではないかということを先ごろ発表した。

惑星探査については、もう数十年以上前にNASAケプラー宇宙望遠鏡で地球から1200光年離れた恒星「ケプラー21」と2700光年離れた「ケプラー69」を観測し、恒星からの距離が近すぎることもなく、遠すぎることもない軌道にそれぞれ2個と1個の惑星が周回しているのを確認したが、それ以後も世界の天文台やアマチュアが次々とこの条件に合う惑星を発見してきている。これらの惑星は地球のように温暖な環境を備え、水が液体の状態で存在している可能性がある。

太陽系外惑星は、これまでケプラー21や69以外でも1000個以上確認されており、地球外生命の探索は比較的に順調に研究が進んでいる。今日ではその地球外生命の生存可能環境についてはかなり確度の高いデータを得るまでになり、生命探査船の打ち上げも行われている。