あまてらす 5.100年後の画像

100年後の画像?

 

先ほどの理論を単純化して考えると、宇宙船内で光速度1ヶ月間生活すると、地球では1年経過ということになる。その計算で行くと、100年後の地球を見るためには光速度100ヶ月、つまり8年4か月ばかり光速宇宙船で逆行して過ごすと100年後の地球をその光速船から観測することができる。問題は、撮影はしたものの100年後の地球に映像を送っても、また地球に帰還しても今回の目的は果たせないのだ。100年後の地球を撮影して、その画像を地球時間で数年以内に届けなければならないのである。そこに研究の困難さがあった。

どうやって届けられるか?そのための課題は何か?

①光速船の建設と、船そのものを帰還させるか、画像のみを送らせるか

②どうやって時間を逆行させられるか

③逆相対性理論は可能か

ブラックホールを経由すべきか、人体への影響はどうか

などについて、四国カルスト研究所内部では様々な議論と研究がなされてきた。

最初の研究段階では宇宙船を帰還させることは技術的な理由と心理的な理由で断念された。当時の技術では探査船を帰すのはかなりコストがかかると計算されたし、それよりも探査船は光速イオンエンジンによりそのまま宇宙を旅させ、画像のみ送るほうが容易ではないかという結論になった。

問題は、超望遠・超高感度カメラで撮影した100年後の地球の映像を、いかにして現代の地球に送ってくることができるかということになったのだ。電波のみを時空をさかのぼって地球に送信することは技術的にどうしても困難であった。それよりも探査船をブラックホールに通過させてからデータを送るのが良いのではないかといったことで議論が噴出した。その議論と研究の結果、無人探査船を少なくとも画像の送れる域まで帰還させる方法がベストだということになったのである。

そこで様々な考察が行われ、結局ワームホールを通過させ時空を超えさせ、100年前の地球に通信させる方法があることに気付いた。もちろんその段階でも有人探査船ではワームホール通過時においては人間どころか微生物の生存も保証できないということが確認された。例えば、ブラックホールに落ちた場合、人間は何と2つに分裂し、ひとつは即座に燃えて灰になり、もう一方は無傷のままブラックホールの中に落ちていくという説もあったので、断念せざるを得なかった。

無人の探査船での通過なら何とかなるという計算である。