あまてらす 7.通信回復!

通信回復!

 

ワームホール通過予定まで10時間」

指令管制センターの前面に大きく表示が出た。

計算では明日の午前3時に通過して出てくるはずである。そのため、深夜にも拘わらず室内にはこの研究に参加したすべての研究者が全国から集まって来ていた。

そして、AM3:00

「通信回復!」

これまで何年も声を出すのを控えていた受信担当チームのリーダーが、久しぶりに大きな声を出せるとばかりに大声で叫んだ。声は研究所内に響き、盛大な拍手が巻き起こった。

「さ、いよいよだ」

あまてらすが無事にワームホールから抜け出して、カルスト研究所との通信が復活したのだ。

理論的には可能であるという計算ではあったが、現実にはワームホールを通過するなんてとても無理だろうというのが研究所内でも支配的であっただけに、管制センター内は驚きと喜びの声で大騒ぎになった。この探査計画に生涯をささげ、すでに高齢となり引退している早瀬博士も来所し、通信回復は当然のことで騒ぐのがおかしいという顔で黙って座っている。

 

「画像が来ました」待ちに待った超高速通信による写真データの送信が始まったのだ。

「なんだこの画像は。おい、間違ってるぞ。他の天体の画像じゃないか」

「そんなはずはない。データによると100光年先から太陽系を焦点としている」

「太陽系に間違いないか」

「99.99パーセント間違いない」

「それじゃ、これはどこの映像だ」

冥王星が宇宙船から最も近い太陽系の星だが、冥王星なら映像は正しいんじゃないか」

「そうやな、この黄土色の無機質な地形はそのようや」

「待ってくださいよ、冥王星のはずはありませんよ。データでは地球を示しているのですから」

管制センター内は騒然とし、研究員たちが口々に叫び始めた。

「それじゃ、月の裏側か。この映像から判断すると月の裏側を撮影したのか」

「月の裏側の100年後を見たって同じやろが」

「月の裏の100年後か、じゃ、結局、地球を映していないじゃないか」

「おかしいですね。データははっきりと地球を狙っているのですが」

「次々と画像が到着しています」

「月の裏側ばかり映してどうなる。失敗か」

「少し広角の画像はないか。そうそう。あれ、横にある小さな星はなんだ」

「どの星だ」

「おかしいな。データではやっぱり地球なんですがね」

「おい、小さなのが月で、大きいのは地球じゃないか」

「やっぱり地球でしょう。しかし、この画像はおかしいですね。黄土色と黒色の地表ですよ」

「逆時空越えは結局出来なくて、未来ではなく太古の地球の映像をみているのだろうか?」

「それじゃ、失敗やないか」

「太古の地球ではない。よく見なさい」ここで早瀬所長が断固として宣言した。

「地表の形状はまさしく地球ですね」

「それじゃ、やっぱり、100年後の地球ですか」

「黄土色は地表で海は黒色ってか。まさか、しかし、これが地球やとしたら、地球は、これ、どうなっとんや」

「これが100年後の正確な地球かもしれないぞ」

「恐ろしいことになってる・・・」