七.足の細い女 ⑦

 外注の件は部内の幹部ミーテイングで話したがすでに全員、石川が叱られたことを知っているようだった。早瀬が考え方を説明した後、部として提案しょうということになった。  

 早瀬が幹部の前でフォローしたこともあり石川は元気を取り戻し、

「さっそく、テレマーケ各社に電話して提案するように伝えます」

と張り切って取り組む姿勢を示した。

 ミーティングのあと、なぜかほっとしてデスクに座り昨日の受注件数表を見ていると電話が鳴った。机上の電話は二台あり、一台は外線直通、もう一台は内線で、どちらも秘書の斉藤がさばいてくれる。直通電話の方が鳴っていた。斉藤が席を外していたので早瀬が受話器を取った。

「はい、サフィール顧客対応部の早瀬です」(マーケティング部と違ってここはオペレーターが聞いているから、丁寧な応答をしないといけないので、かなわんな)と思いながら答えた。

「部長さまですか。私でございます」

「何だ、君か。外線など使って、それに気味の悪い声を出して」

「そんな冷たい言い方はないでしょう。かわいい元部下ですよ」

「何が、かわいいだよ。どうかしたのか」

「どうかしたのかじゃ無いですよ。聞きましたよ」

「何を」

「石川さんを怒ったって」早瀬には何のことかわからなかった。

「何だって、誰を怒ったって」

「石川次長を叱りとばしたという話ですよ」

「全く、地獄の早耳もいいけれど、間違った情報は困るぞ。怒るどころか仲がいいんだから」

「ホントですか」

「いまひまなんとちゃいますか。オペレーターになりたかったら手配するよ」

「そんないやなこと言わないで下さいよ。こちらも大変なんですから」

「いまはこちらのことで手一杯だから、そちらの話は聞きたくないな」

「部長はそんなに冷たい人でしたか」堀にしては珍しく真剣な声になった。

「いやいや、悪かった。なにかあったのか」

「へ、電話では言いにくいので、どうですか今夜あたり」

「今日は、そうだな。久しぶりに行くか」席に戻った斉藤が二人の話を聞いているのを感じた。