九.コンクール ⑦

 電話コンクールについては主催者に内容を確認し、熊本地区担当者に来社してもらい、受注課の主任達を集めて説明会を開いてもらった。同時に昨年の大会の状況を詳しく聞いた。主任連中からはほとんど質問がなかったので、早瀬が中心となって細かなことを聞いたが、主任たちの本心はまだ反対なのかもしれない。

 電話応対コンクールは一般の部と英語の部がある。まず県予選があり上位三人が次の九州ブロック大会に出場でき、その九州ブロック大会で上位三人が全国大会に出場できる仕組みであった。

 英語の部は現時点ではとても参加出来ないので一般の部に挑戦することにした。ただし、パートさんの中には英語が上手な人もいたので、来年度考えることにした。

さらにまったくどういう大会かイメージがわかないので昨年度の地方大会のビデオを 借り受けてきた。

 部内ではオペレーターを直接指導監督している主任らに、オペレーターの中から日常の電話応対の優れているものを五人ほど選ばせた。そして責任者として新人教育担当の末森を指名した。彼女は大卒で既婚者であり、新人教育を見ているとてきぱきと要領良く、また根気強く教え込んでいたので感心したことがあったのだ。

 一月の県予選大会まであと三ヶ月しかなく、しかも初参加である。

コンクール出場予定者については、同じシフトグループにいれ、勤務を同じ時間帯にした。幸い、最繁忙期を過ぎたので毎日一時間の特訓ができる。

 訓練はまず、口の体操と発声練習。また昨年のビデオを何度も見させ、今年のシナリオを作成させ、暗記させ、繰り返し練習させた。

 シナリオは架空の会社を設定し、その会社の電話応対者としてどう応対するかを競うものである。時間は三分間を越えてはならない。

[ケース一]

 お客さんからA出版社に電話がかかってくる。

(客)   「山田商事の黒田ですが、秋山さんいますか」

(対応者)「                                  」

  ( 客)  「チェーン店情報誌の原稿の件だが、いいかね」

(応対者)「                              」

(客)   「全体の文書は良く出来ているが、会社名が一ヶ所間違っているよ。二ページ目の最初の段落のいずみやはカタカナのイズミヤだよ。いつも言っていることだが、会社名や人の名前はとくに注意して間違いの無い様に頼むよ」

 (応対者)「                                    」

 

[ケース二]

 A出版社の担当者がチェーン情報誌取材のために、取材先の三津屋ベーカリー店にアポイントの電話をかける。

(店員) 「はい、三津屋ベーカリーでございます」

  (担当者) 「                      」

(店員) 「そうですか、あいにく店長は外出していまして今日は戻りません。ご用件をファックスで送っていただければ、明日、店長に伝えます。ファックス番号は(〇三)―一三五四―五八六七です」

(担当者)「                     」

(店員) 「はい、そうです」

(担当者)「                      」

(店員) 「わかりました、わたしは崎田と申します」

(担当者)「                     」